Monday, December 16, 2013

英語を通して心理学を学ぶ:偶発的な読解力の向上

外国語としての英語で、学術的な分野を指導することは、学生にとっては付加的な努力を伴うかもしれないが、付加的な利益をももたらすことがある。私は、医学心理学のモジュールに則って、スペイン語が第一言語であるエクアドルの学生に教えたときの、結果を報告する。モジュールの朗読スコアは朗読前後で比較すると、読解力において大きな改善が見られた。しかし、読解後の理解度の自信に変化はなかった。スコアの改善は偶発的な学びの向上を表す、なぜならモジュールは英語の学習を意図する内容は含んでおらず、完全に学術内容重視のものであったからだ。私は学術誌のみを利用した指導は可能だと結論付ける。加えて、このアプローチによって読解力以外の分野も向上する可能性がある。

Pluck G (2013). Teaching psychology through English: Incidental improvement in academic reading comprehension. Journal of Education Sciences and Psychology, 3 (LXV), 38-42. 



Teaching psychology through English: Incidental improvement in academic reading comprehension

頭頂部の損傷によって引き起こされる方向判別機能の欠陥:視覚における腹胞と背胞の相互作用

我々は、左頭頂葉に損傷があり、角度の違いによって目標物を発見したり位置付けたりする機能が欠陥している患者の報告をする。患者は、目標物が単一の特徴(色の違いもしくは角度の違い)を有していた場合の見極めは比較的良かった。頭頂部の損傷の影響は、目標物の認識や角度の違いを減少させる働きを持つ、損傷のない腹側皮質回路に負荷をかけることにあるかもしれない。結果は背側皮質視覚路が、基本的な視覚の機能を支えているということで矛盾しない(例えば、定められた目標物の識別や見極めなど)。同様に、患者は目標物を定めるとき、目標物が大きく表示されたときのほうが見極めの結果が良くなった。更に、患者の見極めのパフォーマンスは、目標物の識別のパフォーマンスよりも良かったことから、見極めの機能のほうが識別機能より優先的に働いていたか、独立に働いたといえる。

Riddoch MJ, Humphreys GW, Jacobson S, Pluck G, Bateman A, & Edwards M (2004). Impaired orientation discrimination and localisation following parietal damage: On the interplay between dorsal and ventral processes in visual perception. Cognitive Neuropsychology, 21, 597-623. doi: 10.1080/02643290342000230 



Impaired orientation discrimination and localisation following parietal damage: On the interplay between dorsal and ventral processes in visual perception

学びの促進のためには好奇心を刺激するべき

好奇心はやる気につながる本質的なものであり、学生の学びの向上のために大きな可能性を秘めている。好奇心についての仮説と、その影響については成人教育に関連する心理学的・教育学的文献に重きを置きながら議論されている。特に、“情報格差”の概念は学究的好奇心の源として調査されている。加えて、好奇心の概念は全く異なる二つの次の学問分野でも応用が期待されている。一つ目が、第二外国語学習と二つ目が医学である。また、研究ベースの学習法は学生の好奇心を刺激する潜在的な要素として検討されている。理論に基づいた簡単な教室での指導上のテクニックも(どの学問分野にも応用できるが)学生の好奇心を刺激するものとなるはずだ。

Pluck G & Johnson H (2011). Stimulating curiosity to enhance learning.Education Sciences and Psychology, 19(2), 24-31. 



Stimulating curiosity to enhance learning

Friday, December 6, 2013

統合失調症における表情認知の障害は異なる感情でも同一であるか。心理学的信号検出から読み解く。

統合失調症患者は表情認知に困難を要する。心理学的信号検出理論によると、表情認知には2つの過程があるという。感覚処理過程(ある表情を他の表情から見分ける感覚)と、認知決定過程(ある表情を特定の感情として判断する返答基準)である。統合失調症における表情認知の障害が、どちらの過程の欠損で引き起こされるのかは不明である。この研究では、我々は、統合失調症患者はどちらの過程にも健常者と比べて欠損があると仮定した。DSM-Ⅳで統合失調症と診断された25人が年齢とIQが同一の健常者と比較検査された。参加者は、“イエス・ノー”タスクを遂行した。これは、88のエークマンの顔が無作為に並べられた“喜んでいる”・“悲しんでいる”・怖がっている“という条件に見合うかという検査であった。表情認知の感覚過程と認知決定過程に関しては心理学的信号検出でdプライムを用いた。統合失調症の患者は、喜んでいる表情を認識する感覚の低下を示したが、恐怖・悲壮を表す表情については認知困難は示さなかった。我々の研究は統合失調症の患者は喜んでいる表情を認識する困難がある一方で恐怖と悲壮を表す表情に関しては困難を示す傾向はないと結論付ける。

Tsoi DT, Lee KH, Khokhar WA, Mir NU, Swalli JS, Pluck G et al. (2008). Is facial emotion recognition impairment in schizophrenia identical for different emotions? a signal detection analysis. Schizophrenia Research, 99, 263-269. doi: 10.1016/j.schres.2007.11.006 



Is facial emotion recognition impairment in schizophrenia identical for different emotions? a signal detection analysis

Thursday, December 5, 2013

統合失調症患者における作業記憶の限定的増加下での持続的注意集中力検査のパフォーマンス

我々は24人の統合失調症患者と24人の健康な比較対象者に持続的集中力検査(作業記憶の限定増加版)を実施した。患者作業記憶の増加に伴って比較的早くパフォーマンスの低下を示していった。我々は、統合失調症では持続した注意力と作業記憶との相互作用で異常が起きていることを提唱する。

Lee KH, Tsoi DT, Khokhar WA, Swalli JS, Gee K, Pluck G & Woodruff PW (2012). Performance on the continuous performance test under parametric increase of working memory load in schizophrenia. Psychiatry Research197 (3), 350-352. doi: 10.1016/j.psychres.2011.09.016 

https://www.academia.edu/2344815/CPT_performance_under_parametric_increase_of_working_memory_load_in_schizophrenia

http://www.gpluck.co.uk/

Performance on the continuous performance test under parametric increase of working memory load in schizophrenia

統合失調症における非致死性自傷行為の臨床的・神経心理学的側面

目的:統合失調症患者の自傷行為を統計的に、また、臨床的・神経心理学的に調査すること。そして、どの側面が予測可能で、臨床措置が施せるかどうかを調査すること。
方法と対象:統合失調症患者87人が以下の項目についてインタビューを受けた。
物質乱用、うつ症状、無希望、陰性・陽性症状と自己洞察
神経心理学的検査は、発病前のIQ、持続的注意集中力検査、認知力検査、衝動性測定(質問票を使用)によって実施された。
更に、3ヵ月間に渡って医療記録の観察も行われた。
結果:59人(68%)の患者が過去に自傷行為(自殺未遂も含む)の経験があると答えた。過去に自傷行為の経験があると答えた患者は、そうでない患者よりもうつ症状、無希望、衝動性、家族健康歴での自傷行為有、多剤乱用を報告し、発病前のIQが高かった。ロジスティック回帰分析により、うつ症状・発病前の高いIQ・多剤乱用はそれぞれ独立に自傷行為に関連があったことが分かった。5人の患者が3ヵ月間の観察の間自傷行為を行った。この5名は全員過去に自傷行為の経験があり、他の自傷行為の経験のない患者より突出してうつ症状が目立っていた。

考察と結論:統合失調症における独立した自傷行為の予測要因は発病前のIQと多剤乱用である。加えて、うつ症状は過去の自傷行為の経験と将来的な自傷行為の予測と、どちらとも独立に関連があった。

Pluck G, Lekka NP, Sarkar S, Lee KH, Bath PA, Sharif O & Woodruff PWR. (2012). Clinical and neuropsychological aspects of non-fatal self-harm in schizophrenia. European Psychiatry, 28(6), 344-348.
doi: 10.1016/j.eurpsy.2012.08.003





Clinical and neuropsychological aspects of non-fatal self-harm in schizophrenia

陰性症状:モチベーションと目標達成行動の「病理」

アルツハイマー病や統合失調症を含む多数の精神医学的・神経医学的疾患では、正常の運動・認知行為・情緒状態が欠落していることが疾患の症状に反映されている。これらの陰性症状は、目標達成行動の基底にある、脳の基本的なメカニズムに欠陥を及ぼす可能性がある。これらの疾患の病理と病態生理学の知識は、現在の科学的検査とも相俟って、目標達成行動の神経生物学的な原理の理解を促進することにつながるだろう。(特に、大脳辺縁系とCSTC回路の間の相互作用について)陰性症状のある患者についての研究も、目標達成行動の認知モデルを検査し、最終的にそのようなモデルを正常・異常な行動の両方にあてはめて神経生物学的に分析するいい機会になるだろう。

Brown RG & Pluck G. (2000). Negative symptoms: the 'pathology' of motivation and goal-directed behaviour. Trends in Neurosciences, 23, 412-417. 10.1016/S0166-2236(00)01626-X 




統合失調症における陰性症状と、目標達成意欲の低下

陰性症状は、統合失調症の特徴として広く知られていて、クレペリンの統合失調症に関する初期の記述にも説明されていた。これらの陰性症状は、心理学的用語では目標達成意欲を損なうものの代表として表される。しかしながら、精神医学内・神経医学内両方においても目標達成意欲を欠く臨床的障害はある。アパシー(無関心さ)は多数の神経変性疾患、パーキンソン病やアルツハイマー病などの重大な症状として認知されている。確かに、これらの症状は性質が異なる臨床障害の代表であるが、うつ病と無関心さは時として測定することが難しい。一つの理由としては、陰性症状の無関心さや無快楽症そのものがうつ病に顕著な症状であることが挙げられる。実際、うつ病はDSM‐Ⅳ(精神障害の診断と統計の手引き)・ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)の基準ではうつ症状が見受けられなくてもうつ病と診断することができる。その場合、目標達成意欲の低下による陰性症状が大切な兆候となる。より極度な目標達成意欲が低下した行動は神経医学的な疾患にみることができ、例えば、アカイネジア(心的無動症)、無為(意志欠如)、無動無言症が例である。一般的には、目標達成意欲が低下した行動は脳の前頭前野の皮質下視床回路の欠陥から生じる障害においてみる事ができる。クリューヴァー・ビューシー症候群に限りこのような形では見受けられないが、多数の疾患は目標達成意欲の低下した行動の連続として観察することができる。

Pluck G & Lee KH (2013). Negative symptoms and related disorders of diminished goal directed behavior. Minerva Psichiatrica: A Journal on Psychiatry, Psychology and Psychopharmacology, 54, 15-29. 




Wednesday, December 4, 2013

執行猶予中の被告人におけるパーソナリティ障害の有無:人格標準検査(縮小版(SAPAS))の検証

パーソナリティ障害は犯罪の常習性の重要な指標であり、刑事司法制度に関わる者にとっては、簡単なパーソナリティ障害の検査は大いに役に立つことだろう。執行猶予中の被告人でのパーソナリティ障害の有無については研究が不十分である。我々はSAPASの併存的妥当性を、英国のリンカンシャー州の執行猶予中の被告人40人の人格障害のための構造化面接(SCID-Ⅱ)の結果をSAPASと比較することによって検査した。SCID-Ⅱは、40人中30人(75%)にパーソナリティ障害があるとの判定を出した。最も共通していたカテゴリーは反社会性パーソナリティ障害であり、40人中20人(50%)が陽性であった。SAPASにおいてのカットオフ値3は障害判断における敏感度(0.73)と特異度(0.9)という良好なバランスを生じさせる。我々は、SAPASは執行猶予中の被告人におけるパーソナリティ障害の有無を検査するツールとして有効であり刑事司法制度に関わる者に役立つものであると結論付ける。

Pluck G, Sirdifield C, Brooker C & Moran P (2012). Screening for personality disorder in probationers: validation of the Standardised Assessment of Personality Abbreviated Scale (SAPAS). Personality and Mental Health, 6 (1), 61-68 doi: 10.1002/pmh.177 





バンガロールとロンドンでの試験的電気けいれん療法の比較

目標:インドのバンガロールと英国のロンドンで実施した試験的な電気けいれん療法の比較を行うこと。
方法:1年間ロンドンとバンガロールの大学病院において行われた電気けいれん療法(以下:ECT)の照会のパターンを、双方の病院で比較する既往調査が実施された。また、ECTの実践はロンドンとバンガロールのうつ病患者へ行われた。(母集団はECT照会の場合:ロンドン n=46, バンガロール n=345, ECT実践に関しては ロンドン n=104, バンガロールn=125 である)

結果:ロンドンにおける1年間の入院数のうちECT照会を受けた割合は0.9%であり、バンガロールでは8.2%であった。バンガロールの方では、統合失調症と診断された患者が高い割合でECT紹介を受けた(P0.0001)。バンガロールの標本と比較して、ロンドンのうつ病患者でECTが実践された患者(n=104)は、より高齢でECT耐性があった(P0.0001)。また入院回数も多く、ECTに対しても反応がより低かった。

結論:ECTの実践はロンドンとバンガロールで実質的に異なった。ロンドンにおけるECTの比較的制限された使用はその地域の治療のガイドライン及びECTについての嫌悪を反映することにもつながる。バンガロールでは電気ショック療法の方が広く使用されていて、良好な結果を生み出していた。そのような対照的な違いの理由と、異国間でのECTの最適な利用については文化相互間の研究が必要になるだろう。


Eranti SV, Thirthalli J, Pattan V, Mogg A, Pluck G et al. (2011). Comparison of ECT practice between London and Bengaluru. Journal of ECT, 27(4),275-280. doi: 10.1097/YCT.0b013e31820f8f7c 

Wednesday, November 20, 2013

ホームレス緊急一時宿泊用施設と物質乱用

我々は興味を持ってウェンディー=マックルとジェフリー=ターンブルのホームレスに関する社説を読んだ。1.確かにホームレス緊急一時宿泊施設(以下、ホームレスシェルター)は完璧なものではないが、最低限「家がない」状態からは人々を保護することができる。例えば、あるホームレスの人では認知機能障害に改善の兆しが見られた者もいた。2.ただし、この関連付けはシェルターの質にも寄るものである。3.我々は、ホームレスシェルターに住む31人と英国内シェフィールドの、シェルターなどに住まない15人のホームレスの人々の間の物質乱用の割合を比較した。シェルターに住む4人(13%)と比べて、シェフィールドのグループでは13人(87%)もの人が過去数か月に薬物を注射した経験があった。更にシェフィールドのグループでは、15人全員が前年にヘロイン若しくはクラックコカイン(高純度コカイン)を乱用していた。一方でシェルターに住むグループではその数は10人であった。

            ホームレスという現象は必然的に有害であり、自己の破滅にも繋がるものである。われわれの研究では、シェルターに住むホームレス間の低い薬物乱用の割合にも関わらず、18人は(58%)ホームレスになってから最低でも1つの薬物を使用し始めたと答えた。ホームレスの人々が助けを得ることができないと、彼らの問題は悪化してしまうだろう。彼らが抱える問題を広く知らせるための公共政策は、長期的に見れば費用効果があるだろう。マックルとターンブルが、カナダ政府の実施する予定のホームレス援助費の削減に関して、懸念を示しているのは正しいと言える。

Pluck G, Lee KH & Parks RW (2007). Homeless shelters and substance misuse. Canadian Medical Association Journal176, 489. doi: 10.1503/cmaj.1060229



ホームレスの人々の間での時間的展望、うつ病と物質乱用について

著者達はジンバルドの時間的展望の個人差を測定する尺度である、ZTPIZimbardo Time Perspective Inventory)を使用し、ホームレスの人々は対照グループと比べて、著しく過去と現在に対して否定的な見方を持っていることを発見した。それは、ZTPIの高い過去否定的・現在宿命的な測定結果と、低い過去肯定的な測定結果に表されている。しかし、未来についての考え方と、現在の享楽に関する測定結果では対照グループとほぼ差がなかった。また、ホームレスの人々の方がうつ症状を多く示し、中でも50人中31人(62パーセント)はうつ病と診断するのに十分な基準を満たしていた。他方でこの結果は、彼らの通常とは異なる時間的展望とは関係がなかった。また、物質乱用と時間的展望に関しても関連性は見つからなかった。うつ病や薬物乱用などの困難にもかかわらず、ホームレスの人々は目標を達成するという未来に対する考え方は維持していることが分かる。


Pluck G, Lee KH, Lauder HE, Fox JM, Spence SA & Parks RW. (2008). Time perspective, depression, and substance misuse among the homeless. The Journal of Psychology, 142, 159-168. doi:10.3200/JRLP.142.2.159-168 



パーキンソン病の気質における認知・情動の相互関係

パーキンソン病の患者はクロニンジャーの3次元人格診断表において、目新しさの追求という分野で低い点数を見せる。それは、この疾患の特徴でもあるドーパミンの不足という形によって反映されている。又、パーキンソン病の患者は、危険回避の分野でも高い点数を見せる。これらや他の観察から、いわゆる「パーキンソン病的性格」というものが提唱されてきているものの、パーキンソン病において頻繁に発症するとされる認知障害・情動障害と上記の特徴との関連性については、ほぼ知られていない。我々は、3次元人格診断表の点数と20人の患者に課した注意力指向性の課題での結果とを分析した。加えて、3次元人格診断表の点数とうつ病・不安障害との関連も分析した。分析の結果、目新しさの追求分野での点数は、注意力指向性課題の「視的な独創物」に対する反応速度と明らかな関連性があった。危険回避の分野での点数は、不安障害とは関連があったものの、うつ病との関連はなかった。これらの発見は我々の、気質が認知・情動とどのように作用しあっているかの理解を広めてくれるものである。


Pluck G & Brown RG (2011). Cognitive and affective correlates of temperament in Parkinson's disease. Depression Research and Treatment.Article ID 893873 doi:10.1155/2011/893873 

http://downloads.hindawi.com/journals/drt/2011/893873.pdf


パーキンソン病における物事への無関心さ

目標:パーキンソン病患者の物事への無関心さとそれによって引き起こされる障害、患者の機嫌、人格、認知との関係を評価すること。
方法:パーキンソン病患者45人の無関心さの度合いを、パーキンソン病と症状が同じ骨関節炎の患者17人と比較した。付加的に、うつ病・不安障害・患者の喜びの量を測定した精神神経系のデータも収集した。なお人格は3次元人格診断表を用いて測定した。認知機能測定には、ミニメンタルステート検査・CAMCOG、その他認知制御に関する課題を実施した。
結果:パーキンソン病患者の方が同症状の骨関節炎の患者より、圧倒的に物事への無関心さの度合いが高かった。更に、パーキンソン病患者限定の抽出結果では、無関心さの度合いは疾患の進行状況とは関係がないことも分かった。高い無関心さの度合いを示したパーキンソン病患者の方が感じる喜びの量は少なかったものの、必ずしも、無関心さの低い度合いを示した患者よりもうつであったり不安である訳ではなかった。また、比較した双方の疾患の患者ともに互いに人格の特徴に違いは見受けられず、パーキンソン病患者のグループ内でも無関心さの度合いに関係なく人格に違いは見受けられなかった。認知機能に関しては、比較した双方の疾患の患者ともに互いに同等の能力であった。しかし、パーキンソン病患者限定の抽出結果においては、無関心さの度合いが高いグループの方が低いグループよりも認知制御の課題を果たせた患者が少なかった。

結論:パーキンソン病患者における物事への無関心さは、障害への適応・反応によるものというよりは、障害関連の患者の生理的な変化によって起こるものである可能性が高い。パーキンソン病患者に起こる無関心さというものは、疾患と関連している他の精神医学的症状や人格の特徴とは区別ができるものであり、認知機能障害と深く関わりがある。これらの発見は、無関心さの表出で認知機能が果たす役割を指し示している。


Pluck G & Brown RG (2002). Apathy in Parkinson's disease. Journal of Neurology Neurosurgery and Psychiatry, 73, 636-642. doi:10.1136/jnnp.73.6.636