Saturday, October 24, 2015

無住居状態における認知機能障害:東京における調査的研究

目的無住居状態はしばしば神経心理学的な機能障害と関連付けられてきた。これらの障害は認知症のスクリーニング検査や認知機能検査を主とする、局所神経機能検査で認めることが出来る。大半の研究は北アメリカの無住居状態の個人が対象であり、日本人を対象に研究が行われた報告はない。


方法:東京において実施した調査では、我々(著者ら3人)は、16人の無住居状態の成人を抽出し、認知機能検査、外傷性脳損傷の有無を査定する検査、常習行為(薬物、賭博、アルコール乱用)に関する検査を行い、無住居状態の詳細についても記録した。発病前IQを測るための認知機能検査は、日本語版NARTを使用した。(Japanese Adult Reading Test, JART)前頭葉の認知機能調査のためには、ウィスコンシンカード分類課題を使用した。そして、総合的な認知機能障害・認知症の査定に際して、ミニメンタルステート検査(別名:簡易知能評価スケール、MMSE)を使用した。


結果:16人中、7人(44%)が認知機能障害を示した。更に、遂行機能も弱いことが確認できた。対照的に、推定した発病前IQは通常範囲内であった。物質乱用は、臨床的な機能異常を引き起こす程度ではなかったが、高レベルの病的賭博は観察された。認知機能と臨床的・依存的行動の変数に関連は見受けられなかったが、認知機能検査のスコアと、無住居状態の年数との間には関連が見受けられた。


結論:結果は、無住居状態の個人における、高レベルの神経心理学的機能障害を示唆するものだといえる。その上、認知機能障害は発達的と言うより、習得的なもので、無住居状態でいた年数と比例する。