Monday, March 3, 2014

うつ病のための電気ショック療法における、メトヘキシトン、プロポフォール、エトミデートの役割:比較研究

メトヘキシトンは麻薬作用があり、電気ショック療法(以下、ECT)では最も頻繁に使用される。しかし、不足と、不安定な有効性から、現在はECTに対して異なる反応を見せる、麻酔効果のある他の薬に頼らざるを得ない。我々は、異なる麻酔のかかった状態の患者がECTに対してどのように反応するか、そして薬の限界を定期的に臨床状態で比較した。これは自然的で・遡及的な、81名に実施された、うつ病に対する連続するECT治療(実施回数659回)の判例研究であった。3つの麻酔薬が比較された。メトヘキシトン(n=34)、プロポフォール(n=13)、エトミデート(n=34)。プロポフォールが平均の発作機関が最も短かった。(p0.0001)しかしながら、発作回数に関してはプロポフォールが最も大きかった(脳波図で15回以下)、そして電気刺激の再実施回数も多かった。異なる薬の限界にもかかわらず、ECTへの異なる麻薬による治療上の影響は見受けられなかった。プロポフォールの使用は費用がかかる長期的な治療となりうる。今回の研究は遡及的な判例研究であり、患者は無作為に麻薬を選出したわけでもなく、標準化された結果も使用されなかった。プロポフォールの標本となった集団は、プロポフォールと他の麻薬との違いを示すほど大きくなかった。正式な経済分析は実施されなかった。それぞれの麻酔薬は発作期間と電気刺激の再実施回数は異なって影響したが、最終的なECTへの反応に不利に働くことはなった。

Eranti SV, Mogg AJ, Pluck G, Landau S, McLoughlin DM (2009). Methohexitone, propofol and etomidate in electroconvulsive therapy for depression: a naturalistic comparison study. Journal of Affective Disorders, 113 (1-2), 165-171. doi:10.1016/j.jad.2008.03.004 





Monday, February 24, 2014

うつ病治療のための、左側前頭前皮質への付随的反復経頭蓋磁気刺激法の4か月追跡治療:ランダム化比較試験

背景:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMSのうつ病への効能性は不明確である。著者らは、4か月間の追跡調査と共に、本物のrTMSと偽rTMSのランダム化比較試験を実施した。
方法:うつ病を発症している59人の患者が無作為に、10日間の本物の前頭前野背外側部のrTMSn=29)若しくは、偽物のrTMS治療(n=30)のために選出された。主要な結果測定方法はハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)と治療後のHAMD50%のスコア低下が見受けられた患者とHAMD8を免除された患者の割合によって測定した。二次的な結果は、ベックうつ病特性尺度、VAMSVisual Analogue Mood Scale)、簡便精神医学的評価尺度(BPRS)、そして主観・客観両方から観察された認知機能の変化によって測定された。患者には6週間と、4か月間のフォローアップが行われた。
結果:概して、HAMDのスコアは両方の対象グループにおいて僅かに低下したが、時間別のグループごとの交差(p=0.09)や、グループの主効果(p=0.85)はなかった。
HAMD のスコアの変化の平均差は-0.3であった(95% CI3.4から2.8へ)。治療の最後では本物のrTMSでは32%が、効果があり、偽のrTMSではその割合は10%だった。(p0.06HAMD8が免除された割合は本物のrTMSを受けたグループでは25%、偽のrTMSを受けたグループでは10%であった。(p0.2HAMDのスコアの変化の平均差は2.9だった、(95% CI0.7から6.5へ)。両対象グループの二次的な結果には変化が見られなかった。患者にも、調査する側にも、盲検を維持するのが困難であった。

結論:左側前頭前皮質への付随的反復経頭蓋磁気刺激法は、偽のrTMSよりも効能があるとは見られなかった。


Mogg A, Pluck G, Eranti SV, Landau S, Purvis R, Brown RG, et al. (2008). A randomized, controlled trial with 4-month follow-up of adjunctive repetitive transcranial magnetic stimulation of the left prefrontal cortex for depression. Psychological Medicine, 38, 323-333. 




Saturday, February 22, 2014

執行猶予中の人々における、精神障害の傾向と、精神衛生維持の兆候

この研究の目的は、英国リンカンシャー州の執行猶予中の人口の精神障害の傾向と物質乱用についての評価を試みることである。執行猶予中の人々は貧困層の人々であることが分かり、一般人口と比べて高い割合で精神障害を有していることが分かった。総じて、27.2%が現在精神障害を有していて(有病誤診も含めると、この数字は38.7%に増加する)、この研究の参加者のうち39.9%は過去に障害を抱えていた(有病誤診を含むと48.6%)。カテゴリー別の結果は以下のとおりである。(有病誤診は各結果の最後に加えてある)

15%は、気分障害を有していた。(17.9%
21.4%は研究時点で不安障害を有していた。(27.2%
8.1%は精神病性障害を有していた。(11%
2.3%は摂食障害を有していた。(5.2%
47.4%は人格障害に当てはまる可能性があった。
38.2%は過去において、気分障害を有していた。
15.6%は過去において、精神病性の障害を有していた。

物質乱用に関する結果を見てみると、55.5%が、AUDITAlcohol Use Disorders Identification Test)において、危険な飲酒のカットオフ値である8点を超える8+をマークし、12.1%がアルコールへの重度の依存を示す11+をマークした。

Brooker C, Sirdifield C, Blizard R, Maxwell-Harrison D, Tetley D, Moran P,Pluck G, et al. (2011). An Investigation into the Prevalence of Mental Health Disorder and Patterns of Health Service Access in a Probation Population. Lincoln (UK): University of Lincoln. 

http://probationchiefs.org/wp-content/uploads/2011/10/RfPB-final-report-17.9.11.pdf

http://www.gpluck.co.uk




成人のホームレスの神経医学的・認知的能力

多数のホームレスの人々は、潜在的に神経医学的な障害を起こす可能性がある状況にさらされた経験がある。この研究では、80人のホームレスの参加者が、一連のテストを受けた。それらは、1)ホームレス状態前の能力を示す、長期記憶と知力を推定し、2)現在の記憶と知力を測定するために作られたテストであった。精神衛生の検診と物質乱用に関するデータも収集された。結果は、現在の記憶力と知力(IQ)は正常の人口の基準とホームレス状態前と比べても著しく低かった。記憶力のスコアは、100.5から90.3に低下し(P.001)、IQ98.8から95.6(P.038)に低下した。課題の種類(記憶力測定か、IQ測定か)と基準(ホームレス状態前か現在か)との関連性も著しく(P.003)、記憶力の方がIQよりも、変化が大きかったことを示した。多数の参加者が、物質乱用と精神衛生上の懸念を報告した。我々は、対象であったホームレスの個人個人が、ホームレス状態の前後に起こった認知機能の低下に苦しんでいることを結論付ける。


Pluck G, Lee KH, David R, Spence SA & Parks RW (2012). Neuropsychological and cognitive performance of homeless adults.Canadian Journal of Behavioural Science, 44(1), 9-15. doi: 10.1037/a0025382 

https://www.academia.edu/1512384/Neuropsychological_and_cognitive_performance_of_homeless_adults

http://www.gpluck.co.uk/



Friday, January 17, 2014

自傷行為と成人のホームレスの人々

背景:ホームレスの状態は、精神障害、自殺を含む高い自傷行為のリスクと関連がある。
目的:自傷行為(自殺未遂と、自殺目的ではない自傷行為も含む)の普及具合をイギリスのホームレスの標本から評価すること。そして、人口統計的、臨床的、またホームレス別の違いを比較し、この母集団においてどの要素が関連しているか決定すること。
方法:80人のホームレスの人々が、自傷行為の経歴、精神障害の病歴、人口統計的、そしてホームレス関連の質問を受けた。
結果:68%の人々が過去に自傷行為の経験があると答えた。自傷行為の経歴がある人は、ホームレスになった後に物質乱用の頻度が増し、ホームレスになった年齢が他のそうでない群より若かった。加えて、旧年の精神科への入院歴や自傷行為の思想などが他のそうでないホームレスの人々よりも著しく多かった。

結論:自傷行為は成人のホームレスの間ではよく見られる現象であり、長期的な、また永久的な精神衛生の懸念と関連がある。


Pluck G, Lee KH & Parks RW (2013). Self-harm and homeless adults.Crisis: The Journal of Crisis Intervention and Suicide Prevention34(5),363-366. doi: 10.1027/0227-5910/a000202




成人期のホームレスと、児童期における虐待との関連性

児童虐待というものは、生涯の発達に多数のネガティブな影響を及ぼす。精神医学的障害の可能性の増加を念頭に、特に物質乱用や人格障害がその例である。その上、影響は一生涯残るものであり、虐待された個人の生涯に重大な跡を残す。なので、先進国の成人のホームレスが、児童虐待や性的虐待を報告する割合が高いのは、驚くべきことではないだろう。成人のホームレスの人々の研究は、過酷な児童虐待の末の社会経済的な成り行きを明らかにできるだろう。更に、虐待による精神障害のある人々の、虐待の精神衛生への影響の見識も与えるであろう。事例の系統分析法と臨床的インタビューから、我々は英国のシェフィールドに居た217人の成人のホームレスのデータを収集した。4人に1人以上のホームレス個人が、幼少時の身体的虐待もしくは性的虐待の経験を報告し、精神障害の割合も高かった。中でも、統合失調症と人格障害の割合が高かった。その上、虐待の経歴は“性別が女性であること”と、“自治体の施設で育てられた”ことと関連性があることがわかった。成人では、性的虐待は人格障害と結びついていた一方で、身体的虐待は、自傷行為と結びついていた。結果は、成人のホームレスの人々の間にある、幼少時のトラウマに関連した心理社会的な問題の複雑な背景を明らかにする。


Pluck G, Girgis S, Lee KH & Parks RW (2013). Childhood abuse and adult Homelessness. In S. Kimura & A. Miyazaki (Eds.), Physical and Emotional Abuse: Triggers, Short and Long-Term Consequences and Prevention Methods. Hauppauge, NY: Nova Publishers. 




Tuesday, January 14, 2014

専門家にかかっている児童と成人の自傷行為の繰り返し

自傷行為(自殺意思の有無に関わらないリストカット、自己中毒など)は若者の間ではよく見られる現象である。我々は5年間で586件の専門家への委託事例(個人数474人)を調査した。我々は、自傷行為を繰り返した若者は、そうでない若者と比べて複雑な家庭環境や、精神障害、物質乱用、児童虐待を含む自己経歴を持っていることが分かった。多数の要因が関連する可能性があるが、回帰分析は自傷行為の繰り返しに関連する独立の要因を明らかにした。それらは、“性別が女性であること”、“親権者が生みの親ではないこと”、“非協力的な親権者”などの要因であった。他の独立した要因としては、患者が複数の自傷行為を行っていた場合、また、飲酒乱用を行っていた場合、多数の社会福祉機関が関わっていたことにあった。

Pluck G, Anderson M, Armstrong M, Armstrong S & Nadkarni A. (2013). Repeat self-harm among children and adolescents referred to a specialist service. Journal of Child & Adolescent Trauma, 6 (1), 57-73. doi: 10.1080/19361521.2013.743949 





神経行動学的・認知的機能は成人のホームレスの幼少時代のトラウマと関連する

目標:ホームレスの人の幼少時代のトラウマの程度について記述すること、そして、トラウマの、神経行動学的機能{前頭葉機能に関する行動評価尺度(FrSBe)を用いる}と認知機能への影響(IQの測定)を判断すること。
計画:英国のシェフィールドから55人のホームレスの人々の標本抽出を行った。全員に物質乱用、幼少時代のトラウマについての報告に加えて、認知機能と神経行動学的機能の測定が課された。
方法:虐待とネグレクトについての経験は小児期心的外傷質問票を用いて測定された。実験の参加者はウェクスラー成人知能検査、FrSBeをも行い、それらは現在の状態とホームレスの前の状態に導くために使用された。
結果:母数の約3/4において、臨床的に見て著しい神経行動学的障害が見られた。また、ホームレスになる前の状態に関しての遡及的報告においても、高い程度で障害があったと報告された。IQの平均は通常基準の下である88であった。成長に伴っての虐待やネグレクトは標本の集団で89%が報告した。精神的虐待・精神的ネグレクト・肉体的ネグレクトの全てがFrSBeのスコアと正の相関関係があった。性的虐待・精神的ネグレクト・肉体的ネグレクトの全てがIQと負の相関関係にあった。トラウマとIQと神経行動学的な特徴は物質乱用とは概して関連がないように思われる。
結論:我々のホームレスの標本は、比較的低いIQと高い程度の神経行動学的障害を示した。我々の検査結果は、これらの神経心理学的要因は、部分的には、幼少時代のトラウマに起因する結果であるかもしれないと提唱する。

Pluck G, Lee KH, McLeod D, Spence SA & Parks RW (2011). Neurobehavioural and cognitive function is linked to childhood trauma in homeless adults. British Journal of Clinical Psychology, 50, 33-45 doi: 10.1348/014466510X490253 

https://www.academia.edu/1512171/Neurobehavioural_and_cognitive_function_is_linked_to_childhood_trauma_in_homeless_adults

http://www.gpluck.co.uk/



Sunday, January 12, 2014

ストリート・チルドレンの認知能力:系統的評価

先進国では珍しいが、発展途上国では、若者が貧困故に街中で生活をするというのはよく見られる現象である。若者を学校教育に従事させるのが一般的な介入方法だが、たいてい彼らは、物質乱用やトラウマなど認知能力を低下させる要因にさらされていることがある。それによって、彼らは潜在的に教育プログラムの効き目を下げていることになる。系統的評価は発展途上国のストリート・チルドレンの認知能力を計測した研究に実施された。研究は7つのみ発見されたが、215人のストリート・チルドレンに実施されていた。研究の評価により、基準以下の知力のパターンと神経心理学的損傷を明らかにした。これらの研究では、知力の測定(IQなど)では効果量の比較が行われていた。それはインドネシアや南アフリカでは認知障害の割合は低かったが、エチオピアとコロンビアでは多少高かったことを明らかにした。結果は街中で生活することの認知能力への影響の文化的な違いを提示する。しかしながら、一般的に、アメリカで実施されたストリート・チルドレンの研究との比較では、基準よりも認知機能は低かった。

Pluck G (2013). Cognitive abilities of 'street children': a systematic review.Chuo Journal of Policy Sciences and Cultural Studies, 21, 121-133.