Friday, January 17, 2014

自傷行為と成人のホームレスの人々

背景:ホームレスの状態は、精神障害、自殺を含む高い自傷行為のリスクと関連がある。
目的:自傷行為(自殺未遂と、自殺目的ではない自傷行為も含む)の普及具合をイギリスのホームレスの標本から評価すること。そして、人口統計的、臨床的、またホームレス別の違いを比較し、この母集団においてどの要素が関連しているか決定すること。
方法:80人のホームレスの人々が、自傷行為の経歴、精神障害の病歴、人口統計的、そしてホームレス関連の質問を受けた。
結果:68%の人々が過去に自傷行為の経験があると答えた。自傷行為の経歴がある人は、ホームレスになった後に物質乱用の頻度が増し、ホームレスになった年齢が他のそうでない群より若かった。加えて、旧年の精神科への入院歴や自傷行為の思想などが他のそうでないホームレスの人々よりも著しく多かった。

結論:自傷行為は成人のホームレスの間ではよく見られる現象であり、長期的な、また永久的な精神衛生の懸念と関連がある。


Pluck G, Lee KH & Parks RW (2013). Self-harm and homeless adults.Crisis: The Journal of Crisis Intervention and Suicide Prevention34(5),363-366. doi: 10.1027/0227-5910/a000202




成人期のホームレスと、児童期における虐待との関連性

児童虐待というものは、生涯の発達に多数のネガティブな影響を及ぼす。精神医学的障害の可能性の増加を念頭に、特に物質乱用や人格障害がその例である。その上、影響は一生涯残るものであり、虐待された個人の生涯に重大な跡を残す。なので、先進国の成人のホームレスが、児童虐待や性的虐待を報告する割合が高いのは、驚くべきことではないだろう。成人のホームレスの人々の研究は、過酷な児童虐待の末の社会経済的な成り行きを明らかにできるだろう。更に、虐待による精神障害のある人々の、虐待の精神衛生への影響の見識も与えるであろう。事例の系統分析法と臨床的インタビューから、我々は英国のシェフィールドに居た217人の成人のホームレスのデータを収集した。4人に1人以上のホームレス個人が、幼少時の身体的虐待もしくは性的虐待の経験を報告し、精神障害の割合も高かった。中でも、統合失調症と人格障害の割合が高かった。その上、虐待の経歴は“性別が女性であること”と、“自治体の施設で育てられた”ことと関連性があることがわかった。成人では、性的虐待は人格障害と結びついていた一方で、身体的虐待は、自傷行為と結びついていた。結果は、成人のホームレスの人々の間にある、幼少時のトラウマに関連した心理社会的な問題の複雑な背景を明らかにする。


Pluck G, Girgis S, Lee KH & Parks RW (2013). Childhood abuse and adult Homelessness. In S. Kimura & A. Miyazaki (Eds.), Physical and Emotional Abuse: Triggers, Short and Long-Term Consequences and Prevention Methods. Hauppauge, NY: Nova Publishers. 




Tuesday, January 14, 2014

専門家にかかっている児童と成人の自傷行為の繰り返し

自傷行為(自殺意思の有無に関わらないリストカット、自己中毒など)は若者の間ではよく見られる現象である。我々は5年間で586件の専門家への委託事例(個人数474人)を調査した。我々は、自傷行為を繰り返した若者は、そうでない若者と比べて複雑な家庭環境や、精神障害、物質乱用、児童虐待を含む自己経歴を持っていることが分かった。多数の要因が関連する可能性があるが、回帰分析は自傷行為の繰り返しに関連する独立の要因を明らかにした。それらは、“性別が女性であること”、“親権者が生みの親ではないこと”、“非協力的な親権者”などの要因であった。他の独立した要因としては、患者が複数の自傷行為を行っていた場合、また、飲酒乱用を行っていた場合、多数の社会福祉機関が関わっていたことにあった。

Pluck G, Anderson M, Armstrong M, Armstrong S & Nadkarni A. (2013). Repeat self-harm among children and adolescents referred to a specialist service. Journal of Child & Adolescent Trauma, 6 (1), 57-73. doi: 10.1080/19361521.2013.743949 





神経行動学的・認知的機能は成人のホームレスの幼少時代のトラウマと関連する

目標:ホームレスの人の幼少時代のトラウマの程度について記述すること、そして、トラウマの、神経行動学的機能{前頭葉機能に関する行動評価尺度(FrSBe)を用いる}と認知機能への影響(IQの測定)を判断すること。
計画:英国のシェフィールドから55人のホームレスの人々の標本抽出を行った。全員に物質乱用、幼少時代のトラウマについての報告に加えて、認知機能と神経行動学的機能の測定が課された。
方法:虐待とネグレクトについての経験は小児期心的外傷質問票を用いて測定された。実験の参加者はウェクスラー成人知能検査、FrSBeをも行い、それらは現在の状態とホームレスの前の状態に導くために使用された。
結果:母数の約3/4において、臨床的に見て著しい神経行動学的障害が見られた。また、ホームレスになる前の状態に関しての遡及的報告においても、高い程度で障害があったと報告された。IQの平均は通常基準の下である88であった。成長に伴っての虐待やネグレクトは標本の集団で89%が報告した。精神的虐待・精神的ネグレクト・肉体的ネグレクトの全てがFrSBeのスコアと正の相関関係があった。性的虐待・精神的ネグレクト・肉体的ネグレクトの全てがIQと負の相関関係にあった。トラウマとIQと神経行動学的な特徴は物質乱用とは概して関連がないように思われる。
結論:我々のホームレスの標本は、比較的低いIQと高い程度の神経行動学的障害を示した。我々の検査結果は、これらの神経心理学的要因は、部分的には、幼少時代のトラウマに起因する結果であるかもしれないと提唱する。

Pluck G, Lee KH, McLeod D, Spence SA & Parks RW (2011). Neurobehavioural and cognitive function is linked to childhood trauma in homeless adults. British Journal of Clinical Psychology, 50, 33-45 doi: 10.1348/014466510X490253 

https://www.academia.edu/1512171/Neurobehavioural_and_cognitive_function_is_linked_to_childhood_trauma_in_homeless_adults

http://www.gpluck.co.uk/



Sunday, January 12, 2014

ストリート・チルドレンの認知能力:系統的評価

先進国では珍しいが、発展途上国では、若者が貧困故に街中で生活をするというのはよく見られる現象である。若者を学校教育に従事させるのが一般的な介入方法だが、たいてい彼らは、物質乱用やトラウマなど認知能力を低下させる要因にさらされていることがある。それによって、彼らは潜在的に教育プログラムの効き目を下げていることになる。系統的評価は発展途上国のストリート・チルドレンの認知能力を計測した研究に実施された。研究は7つのみ発見されたが、215人のストリート・チルドレンに実施されていた。研究の評価により、基準以下の知力のパターンと神経心理学的損傷を明らかにした。これらの研究では、知力の測定(IQなど)では効果量の比較が行われていた。それはインドネシアや南アフリカでは認知障害の割合は低かったが、エチオピアとコロンビアでは多少高かったことを明らかにした。結果は街中で生活することの認知能力への影響の文化的な違いを提示する。しかしながら、一般的に、アメリカで実施されたストリート・チルドレンの研究との比較では、基準よりも認知機能は低かった。

Pluck G (2013). Cognitive abilities of 'street children': a systematic review.Chuo Journal of Policy Sciences and Cultural Studies, 21, 121-133. 






Friday, January 10, 2014

執行猶予と精神疾患

囚人の精神疾患の程度は高いが、執行猶予(社会奉仕活動など)に従事している者に関しての状況は、ほとんど知られていない。英国保健省が、犯罪人が精神疾患施設の利用ができるよう改善を図ろうとしているが、一度に多くの情報が求められる。現在の、そして恒久的な精神疾患の普及を推定するために、英国のリンカンシャー州で、執行猶予中の個人に疫学的な統計が実施された。統計は精神疾患簡易構造化面接(M.I.N.I)とその他の精神疾患の測定方法が使用された。我々は執行猶予中の個人約39%が精神疾患に苦しんでいて、中でも不安障害が一番共通していると推定した。更に、60%が物質乱用を抱えており、48%は人格障害があった。恒久的な精神疾患、共存症、重複診断も高い割合で見つかった。他の犯罪人の母集団と共通して、執行猶予中の者でも精神疾患の程度は高かった。


Brooker C, Sirdifield C, Blizard R, Denney D & Pluck G (2012). Probation and mental illness. Journal of Forensic Psychiatry and Psychology23 (4),522-537. doi: 10.1080/14789949.2012.704640 


治療中のアヘン中毒者の、中毒前と現在の神経心理学的機能

背景:物質乱用と神経心理学的障害(特に、前頭前野の機能に関するもの)を結びつける集成資料が存在する。物質乱用の直接の影響というよりはむしろ、中毒前、潜在的に障害があった可能性もある。
方法:現在、中毒治療中の患者22人が健康な対照者とマッチングされた。我々は、中毒前と現在の神経心理学的な異常を、前頭葉機能に関する行動評価尺度(FrSBe)を使用して比較した。中毒前の推定IQと、現在のIQも測定した。
結果:社会経済的な違いは両集団共に見られなかった。また、アヘン中毒と関連した認知機能の変化(現在のIQと関連して)や、中毒前のIQが潜在的に低かったことを示す結果は見つからなかった。しかし、FrSBeの結果では、アヘン中毒者のほうが高い割合で無気力の状態を報告した。また、前頭前野と結びつく神経心理的機能の障害を示すような証拠も、FrSBeの高いスコアから見つかった。加えて、アヘン中毒者は、中毒に先行する期間でも、健康な対象者と比較して高い割合で神経心理的異常を報告した。

結論:結果は、中毒者の中にも、総合的な認知機能とは独立して、神経心理的異常を示す患者がいるということを表す。そして、その異常は、物質乱用の影響が及ぶ前から既に存在していたということを示唆する。

Pluck G, Lee KH, Rele R, Spence SA, Sarkar S, Lagundoye O & Parks RW (2012). Premorbid and current neuropsychological function in opiate abusers receiving treatment. Drug and Alcohol Dependence. 124, 181-184. doi:10.1016/j.drugalcdep.2012.01.001